せっかく採用した特定技能外国人材が、半年も経たずに辞めてしまう。こうした悩みを抱える企業は少なくありません。出入国在留管理庁の統計によると、特定技能外国人の転籍(転職)件数は年々増加傾向にあり、受入れ企業にとって「定着率の向上」は採用と並ぶ最重要課題となっています。外国人材の早期離職は、採用コストの損失だけでなく、現場の業務負担増大やチームの士気低下にもつながります。

外国人材が離職する原因は、給与や待遇面だけではありません。言葉の壁、生活面での不安、キャリアの見通しが立たない、職場での孤立感など、日本人社員とは異なる要因が複合的に絡み合っています。逆に言えば、これらの要因に対して適切な手を打つことで、定着率は大幅に改善できます。

本記事では、特定技能外国人材の定着率を高めるための5つの実践施策を、具体的な取り組み例とともに解説します。介護・ビルクリーニング・宿泊などの分野で外国人材を受入れている企業の人事担当者・経営者の方は、ぜひ自社の取り組みと照らし合わせながらお読みください。

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生活支援の充実 -- 安心して暮らせる基盤づくり

外国人材にとって、日本での生活は言語も文化も異なる環境への適応そのものです。「仕事には満足しているが、生活面の不安から帰国を決めた」というケースは珍しくありません。入社前から入社後3ヶ月のオンボーディング期間に、手厚い生活支援を提供することが定着の土台になります。

入社前〜3ヶ月の生活支援ロードマップ

入社前

住居の手配:社宅の確保、または不動産会社との連携。保証人問題の解決(法人契約や保証会社の利用)。生活必需品(布団・調理器具等)の準備。

入社1週目

行政手続きの同行支援:住民登録、銀行口座の開設、携帯電話の契約、国民健康保険の加入手続きなどに同行。

入社2週目

生活オリエンテーション:ゴミ分別のルール、公共交通機関の利用方法、近隣の病院・スーパー・コンビニの案内、災害時の避難場所の確認。

1〜3ヶ月

定期的なフォローアップ:生活上の困りごとがないか定期的にヒアリング。必要に応じて行政の相談窓口(多言語対応)を案内。

実践のヒント:生活支援チェックリストを多言語で作成し、外国人材に渡しましょう。住居・銀行・携帯・病院・ゴミ分別・交通の各項目を一覧にまとめることで、抜け漏れを防ぎ、外国人材自身が進捗を確認できます。特定技能の法定支援である「生活オリエンテーション」の実施記録にもなるため、一石二鳥です。

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日本語教育・コミュニケーション支援

言葉の壁は、外国人材が日本の職場で最もストレスを感じる要因のひとつです。特定技能1号の取得要件はJLPT N4レベル(基本的な日本語を理解できる)ですが、職場での円滑なコミュニケーションにはN3以上の日本語力が求められる場面が多くあります。企業側が日本語学習の機会を提供することは、定着率向上に直結します。

具体的な取り組み

  • 社内日本語教室の開催:週1〜2回、業務終了後や休憩時間に30分〜1時間程度の日本語レッスンを実施。外部の日本語教師に依頼するほか、地域のボランティア日本語教室と連携する方法もあります。
  • 「やさしい日本語」の社内導入:日本人社員に対して「やさしい日本語」の研修を実施。難しい漢語や敬語を平易な表現に置き換えるだけで、コミュニケーションの質が大幅に向上します。
  • 多言語マニュアルの整備:業務手順書や安全マニュアルを、外国人材の母国語と日本語の併記で作成。写真やイラストを多用すると理解度がさらに高まります。
  • バディ制度:日本人社員を1名、日常的なコミュニケーションのパートナーとして指名。業務上の疑問や日本語の言い回しについて、気軽に聞ける相手がいることで安心感が生まれます。

実践のヒント:JLPT N3の合格を目標に設定し、合格時には資格手当や報奨金を支給する仕組みを導入している企業もあります。外国人材自身のモチベーション向上にもつながり、N3を取得すると業務効率も目に見えて改善されるため、企業にとっても投資対効果の高い施策です。

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キャリアパスの明示 -- 将来の見通しを示す

「この会社で働き続けても、将来が見えない」。これは外国人材が転職や帰国を決断する大きな理由です。特定技能2号への移行や、介護福祉士などの国家資格取得に向けた道筋を具体的に示すことで、外国人材に「この会社で長く働きたい」と思ってもらうことができます。

キャリアパス設計の4つの柱

特定技能2号への移行支援

特定技能2号に移行すれば在留期間の上限がなくなり、家族の帯同も可能になります。2号の技能試験対策として、試験情報の提供や受験費用の補助を行いましょう。

資格取得支援

介護福祉士、調理師、ビルクリーニング技能士など、分野別の国家資格の取得を支援。受験費用の補助、学習時間の確保、教材の提供などを行います。

昇給テーブルの明示

「入社1年目は月給○万円、資格取得後は○万円、リーダー職は○万円」のように、報酬の上がり方を入社時に書面で提示。将来の収入見通しが立つことで安心感が生まれます。

定期面談の実施

3ヶ月に1回程度、キャリアに関する面談を実施。現在のスキル評価、次の目標設定、困っていることのヒアリングを行い、本人と企業の方向性をすり合わせます。

実践のヒント:キャリアパスは入社時のオリエンテーションで必ず説明しましょう。母国語に翻訳した「キャリアマップ」を1枚の図にまとめて渡すと効果的です。在留資格の申請手続きと連動して、2号移行のスケジュールも一緒に示すことで、より具体的なイメージを持ってもらえます。

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職場環境の整備 -- 異文化共生の仕組みづくり

外国人材が「この職場に居場所がある」と感じられるかどうかは、定着率に直結します。日本人社員側の受入れ体制が整っていなければ、どれだけ生活支援や日本語教育を充実させても効果は半減してしまいます。異文化理解を組織全体に浸透させることが重要です。

具体的な取り組み

  • 異文化理解研修の実施:外国人材を受入れる前に、日本人社員向けの研修を実施。相手国の文化・宗教・慣習の基礎知識、コミュニケーションの注意点、無意識のバイアスへの気づきなどをカバーします。
  • 宗教・食事への配慮:イスラム教徒の礼拝時間の確保やハラル食への対応、ヒンドゥー教徒の牛肉禁忌など、宗教上の配慮を職場ルールに組み込みます。社員食堂がある場合は、食材の表示を多言語化することも有効です。
  • 相談窓口の設置:業務上の悩みや人間関係のトラブルを相談できる窓口を設置。外国人材が直属の上司には言いにくいことも、第三者の窓口であれば相談しやすくなります。母国語での対応が理想的です。
  • 定期面談の実施:月1回程度、上司との1on1面談を設定。業務の進捗だけでなく、職場で困っていること、日本の生活で不安なことなども聞き取ります。通訳を同席させると、より深い話ができます。
  • 外国人同士のコミュニティ支援:同じ国籍や地域出身の外国人材同士が交流できる場を設ける。社内の懇親会やSNSグループを活用し、孤立を防ぎます。同じ経験を共有できる仲間の存在は、大きな心の支えになります。

実践のヒント:異文化理解研修は、外国人材の入社前だけでなく、年に1回程度の定期開催がおすすめです。外国人材本人に自国の文化を紹介してもらうワークショップ形式にすると、日本人社員の理解が深まると同時に、外国人材自身の「認められている」という実感にもつながります。

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メンター制度の導入 -- 1対1の伴走支援

メンター制度とは、経験豊富な社員(メンター)が新入社員(メンティー)に対して、業務指導だけでなく、精神的なサポートやキャリア相談を行う仕組みです。外国人材の場合、文化的な背景の違いから日本人以上にきめ細やかなフォローが必要であり、メンター制度は定着支援の核になり得る施策です。

効果的なメンター制度の設計ポイント

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1対1の専任メンターを配置

外国人材1名に対してメンター1名を専任で配置します。メンターは直属の上司とは別の人物が望ましく、外国人材が気兼ねなく相談できる関係性を構築します。

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先輩外国人材の活用

すでに社内で活躍している外国人材をメンターに起用する方法も非常に効果的です。同じ立場を経験した先輩だからこそ共感できる悩みがあり、母国語でのコミュニケーションも可能です。先輩外国人材のリーダーシップ育成にもつながります。

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月1回の振り返り面談

メンターとメンティーが月1回、30分〜1時間の振り返り面談を実施。業務の成長実感、困っていること、次の目標などを話し合います。記録をシートに残し、管理者も状況を把握できるようにしましょう。

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母国語対応の相談体制

深刻な悩みほど母国語でしか表現できないものです。通訳アプリの活用、多言語対応の相談ホットライン(自治体提供のものもあり)の案内、同国出身の先輩社員との連携など、母国語で相談できる選択肢を用意します。

実践のヒント:メンター制度は少なくとも入社後1年間は継続しましょう。特に最初の3ヶ月は週1回のペースで面談を行い、3ヶ月以降は月1回に移行するのが効果的です。メンターには事前に「傾聴」「異文化コミュニケーション」の研修を実施すると、メンタリングの質が大きく向上します。

定着率セルフチェックリスト

自社の取り組み状況を確認してみましょう。以下の項目に該当するものが多いほど、外国人材の定着率は高くなる傾向があります。

生活支援

  • 入社前に住居を手配している
  • 銀行口座・携帯電話の契約を同行サポートしている
  • ゴミ分別・交通・病院など生活ルールのオリエンテーションを実施している
  • 入社後3ヶ月間は定期的に生活面のフォローアップを行っている

日本語・コミュニケーション

  • 社内日本語教室や外部の日本語学習機会を提供している
  • 「やさしい日本語」を社内で推進している
  • 業務マニュアルを多言語化している
  • 日本語のバディ(日常的な会話パートナー)がいる

キャリアパス

  • 特定技能2号への移行や資格取得の支援をしている
  • 昇給テーブルを入社時に書面で説明している
  • 3ヶ月に1回以上、キャリアに関する面談を実施している

職場環境

  • 日本人社員向けの異文化理解研修を実施している
  • 宗教・食事への配慮を職場ルールに組み込んでいる
  • 外国人材が相談できる窓口を設置している
  • 外国人同士のコミュニティづくりを支援している

メンター制度

  • 1対1のメンターを配置している
  • 月1回以上の振り返り面談を実施している
  • 母国語での相談ができる体制がある

15項目中10項目以上にチェックが入れば「定着率の高い企業」と言えます。チェックが入らなかった項目は、改善の優先順位をつけて計画的に取り組みましょう。すべてを一度に導入する必要はありません。まずは生活支援と日本語教育から始め、段階的に充実させていくのが現実的です。

まとめ

外国人材の定着率を上げるための5つの施策を改めて整理します。

  1. 1 生活支援の充実 -- 住居・行政手続き・生活ルールのサポートで安心の土台をつくる
  2. 2 日本語教育・コミュニケーション支援 -- 社内日本語教室・やさしい日本語・多言語マニュアルで言葉の壁を下げる
  3. 3 キャリアパスの明示 -- 特定技能2号・資格取得・昇給テーブルで将来の見通しを示す
  4. 4 職場環境の整備 -- 異文化理解研修・宗教配慮・相談窓口で「居場所」をつくる
  5. 5 メンター制度の導入 -- 1対1の伴走支援で孤立を防ぎ、成長を後押しする

外国人材の定着は、採用活動の「ゴール」ではなく「スタート」です。採用コストの回収には最低でも1年以上の就労が必要とされており、早期離職は企業にとって大きな損失です。採用コストの全体像を把握したうえで、定着施策への投資を検討することをおすすめします。

これらの施策は、特定技能の法定支援(生活オリエンテーション、定期面談など)とも密接に関連しています。法定支援を「義務的にこなす」のではなく、「定着施策の一環として積極的に活用する」という視点を持つことで、同じ取り組みでも効果が大きく変わります。

「具体的にどこから手をつければいいかわからない」「自社の受入れ体制を見直したい」という方は、ぜひ丸忠物産にご相談ください。採用から定着支援まで、ワンストップでサポートいたします。

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