「特定技能の外国人材を採用したいが、ビザ申請の手続きが複雑で何から始めればいいか分からない」――これは初めて外国人材を受け入れる企業の人事担当者から最も多く寄せられる声です。必要書類の多さ、申請パターンの違い、審査期間の不透明さなど、不安要素が多いのが実情です。
本記事では、在留資格「特定技能1号」の申請手続きについて、申請パターン別の流れ・必要書類・審査期間・よくある不許可理由・許可率を上げるコツまで、企業の人事担当者が知っておくべき情報を網羅的に解説します。
手続きの全体像を正しく把握することで、スムーズな受入れ体制の構築につなげてください。
目次
1 特定技能ビザとは
「特定技能」は、2019年4月に創設された在留資格で、深刻な人手不足に対応するため、一定の専門性・技能を持つ外国人材を受け入れることを目的としています。「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があります。
特定技能1号
- 在留期間:通算5年が上限
- 技能水準:各分野の試験に合格
- 日本語能力:N4以上(または試験合格)
- 家族帯同:不可
- 支援計画の実施が必要
特定技能2号
- 在留期間:上限なし(更新可)
- 技能水準:1号より高い熟練技能
- 家族帯同:可能
- 支援計画の実施:不要
- 対象分野:11分野
対象16分野(2024年3月 4分野追加済み)
本記事では、企業からの申請頻度が高い「特定技能1号」の手続きを中心に解説します。2号への移行については、分野別の試験制度が順次整備されている段階です。
2 3つの申請パターン
特定技能の在留資格を取得する方法は、外国人材の現在の状況によって3つのパターンに分かれます。それぞれ必要書類や手続きの流れが異なるため、最初にどのパターンに該当するかを確認してください。
海外からの呼び寄せ(在留資格認定証明書交付申請)
海外在住の外国人材を日本に招聘するケース
- 企業が地方出入国在留管理局に「在留資格認定証明書」(COE)の交付を申請
- COE交付後、外国人が現地の日本大使館・領事館でビザ(査証)を取得
- 全体で3〜6ヶ月程度かかるケースが多い
国内の在留資格変更(在留資格変更許可申請)
留学・技人国など他の在留資格から変更するケース
- 現在の在留資格から「特定技能1号」への変更を申請
- 留学生、技能実習修了者、特定活動(就活)などからの変更が多い
- 審査期間は1〜3ヶ月程度
技能実習からの移行
技能実習2号・3号を良好に修了した方が移行するケース
- 同一の業務区分であれば、技能試験・日本語試験が免除
- 技能実習評価試験の合格証明が必要
- 手続きはパターンBと同様(在留資格変更許可申請)
技能実習からの移行が最もスムーズ:技能実習2号を良好に修了していれば、同一分野への移行時に試験が免除されるため、書類の準備負担が比較的軽くなります。詳しくは特定技能と技能実習の違いを徹底比較をご覧ください。
3 必要書類一覧
特定技能の申請には、企業側(受入れ機関)と外国人側の双方で多くの書類が必要です。分野によって追加書類もあるため、申請前に最新の出入国在留管理庁のリストを必ず確認してください。
企業側(受入れ機関)の書類
| 書類名 | 備考 |
|---|---|
| 特定技能所属機関概要書 | 会社の基本情報・事業内容 |
| 登記事項証明書 | 法務局で取得(発行3ヶ月以内) |
| 決算書(直近2期分) | 貸借対照表・損益計算書 |
| 労働保険・社会保険の加入証明 | 労働保険料の領収証書、社会保険料の納入証明等 |
| 納税証明書 | 法人税、消費税、地方税の納税証明 |
| 雇用条件書 | 所定の様式。日本人と同等以上の報酬が条件 |
| 1号特定技能外国人支援計画書 | 10項目の支援内容を具体的に記載 |
| 支援委託契約書 | 登録支援機関に委託する場合のみ |
| 誓約書・役員の誓約書 | 欠格事由に該当しないことの誓約 |
外国人側の書類
| 書類名 | 備考 |
|---|---|
| 在留資格認定証明書交付申請書 / 在留資格変更許可申請書 | 申請パターンにより異なる |
| 写真(縦4cm x 横3cm) | 3ヶ月以内に撮影したもの |
| パスポートのコピー | 顔写真ページ |
| 技能試験の合格証明書 | 各分野の技能評価試験。技能実習2号修了者は免除の場合あり |
| 日本語能力試験の合格証明書 | JLPT N4以上 or JFT-Basic合格。技能実習2号修了者は免除 |
| 健康診断個人票 | 所定の様式。3ヶ月以内のもの |
| 納税証明書・住民税課税証明書 | 在日の場合。未納がないことの証明 |
分野別の追加書類(一例)
介護分野
- 介護技能評価試験の合格証明
- 介護日本語評価試験の合格証明
- 介護分野における特定技能協議会の加入証明
建設分野
- 建設特定技能受入計画の認定通知書
- JACへの加入証明
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)登録
外食業分野 ※2026年4月〜新規受入停止中
- 外食業特定技能1号技能測定試験の合格証明
- 食品産業特定技能協議会の加入書類
- 新規入国・在留資格変更は原則不許可(在日転職・在留更新は可能)
ビルクリーニング分野
- ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験の合格証明
- ビルクリーニング分野特定技能協議会の加入書類
重要:書類は頻繁に改定されます。申請前に必ず出入国在留管理庁の公式サイトで最新の提出書類リストを確認してください。行政書士に依頼する場合でも、企業側で用意する書類は多数あります。
4 申請の流れ・タイムライン
ここでは最も一般的な「海外からの呼び寄せ」を例に、申請から就労開始までの5つのステップを解説します。在留資格変更の場合はStep3・Step4が不要になります。
事前準備・書類収集
目安:1〜2ヶ月
- 雇用契約の締結
- 1号特定技能外国人支援計画の策定
- 事前ガイダンスの実施
- 各種証明書の取得(企業側・外国人側)
- 分野別の協議会への加入手続き
在留資格認定証明書(COE)の交付申請
審査期間:1〜3ヶ月
- 管轄の地方出入国在留管理局に申請書類一式を提出
- オンライン申請(在留申請オンラインシステム)も利用可能
- 追加資料の求めに迅速に対応する
在外公館でのビザ(査証)申請
目安:1〜2週間
- COE交付後、外国人本人が母国の日本大使館・領事館でビザを申請
- COEの有効期限は交付から3ヶ月(特例で6ヶ月に延長の場合あり)
入国・在留カード交付
入国当日
- 空港で上陸許可を受け、在留カードが交付される
- 企業は出入国時の送迎を実施(支援義務)
- 14日以内に住居地の届出(市区町村役場)
就労開始・届出
入国後すみやかに
- 生活オリエンテーションの実施(支援義務)
- 「特定技能雇用契約に係る届出」を出入国在留管理庁に提出
- ハローワークへの外国人雇用状況の届出
トータル所要期間の目安:海外からの呼び寄せの場合は3〜6ヶ月、国内での在留資格変更の場合は1〜3ヶ月が一般的です。繁忙期(4月入社向けの1〜3月など)は審査が集中するため、余裕をもったスケジュールで進めてください。
5 審査期間の目安
出入国在留管理庁の審査期間は、申請の種類や管轄局の混雑状況によって異なります。以下は一般的な目安です。
| 申請の種類 | 審査期間の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 在留資格認定証明書交付申請(新規・海外から) | 1〜3ヶ月 | 初めての申請は長めになる傾向 |
| 在留資格変更許可申請(国内変更) | 1〜3ヶ月 | 留学からの変更は比較的スムーズ |
| 在留期間更新許可申請(更新) | 2週間〜1ヶ月 | 問題なければ比較的早い |
審査が早いケース
書類不備がない/過去に許可実績がある企業/追加書類の提出が迅速
審査が長引くケース
書類不備や追加書類の要求がある/初回申請で企業の審査が入念に行われる
オンライン申請
在留申請オンラインシステムの利用で、窓口に行く時間を短縮。結果通知もオンラインで受取可能
ポイント:在留期間の更新は、期間満了の3ヶ月前から申請可能です。ギリギリにならないよう、満了日の2〜3ヶ月前には準備を始めることをおすすめします。
6 よくある不許可理由と対策
特定技能の申請が不許可になるケースには、共通するパターンがあります。以下の5つの不許可理由と対策を事前に把握しておくことで、許可の可能性を高められます。
書類の不備・記載ミス
申請書の記載漏れ、添付書類の不足、様式の誤りなど。単純なミスが原因で不許可になるケースは少なくありません。
対策:提出前に出入国在留管理庁の最新チェックリストで照合する。行政書士に依頼する場合でも、企業側の記載内容は自社でダブルチェック。
報酬額が日本人と同等以上でない
特定技能外国人の報酬は「日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上」が法律上の要件です。最低賃金を上回っていても、同じ業務に従事する日本人社員との比較で不十分と判断される場合があります。
対策:賃金台帳などで同等業務の日本人従業員との比較を明確に説明できるようにする。比較対象がいない場合は、賃金規程や業界水準との整合性を示す。
支援計画の内容不備
1号特定技能外国人支援計画の10項目が具体的に記載されていない、実施体制が不明確など。形式的な記載だけでは不十分と判断されることがあります。
対策:各支援項目について「いつ・誰が・どのように」実施するかを具体的に記載する。通訳の手配方法、相談窓口の連絡先なども明記。
企業側の法令違反・届出不備
社会保険や労働保険の未加入、税金の滞納、過去の入管法違反歴などがある場合、受入れ機関として不適格と判断されます。
対策:申請前に社会保険・労働保険・納税の状況を確認し、未納があれば解消する。過去5年間に入管法違反がないことも確認。
業務内容と分野の不一致
雇用条件書に記載された業務内容が、その分野で認められている業務区分と合致していない場合。「付随的な業務」の範囲を超えた記載も不許可の原因になります。
対策:各分野の運用要領で認められている業務区分を正確に把握し、雇用条件書の業務内容が合致していることを確認する。
7 許可率を上げる3つのポイント
ポイント1:書類の「質」にこだわる
単に必要書類を揃えるだけでなく、審査官が判断しやすい書類を作成することが重要です。特に以下の点を意識してください。
- 雇用条件書は、業務内容・報酬・労働時間を具体的かつ明確に記載
- 同等報酬であることの説明書を任意で添付(比較対象の日本人との説明)
- 支援計画は「具体的に何をするか」を実施スケジュール付きで記載
ポイント2:専門家を活用する
特定技能の申請は、入管法に精通した行政書士に依頼するのが最も確実です。特に初回申請の場合、企業審査が入念に行われるため、専門家のサポートが許可率に大きく影響します。
- 入管業務の実績が豊富な行政書士を選ぶ
- 申請取次の資格を持つ行政書士であれば、企業に代わって入管に申請可能
- 人材紹介会社が提携する行政書士を紹介してくれるケースも多い
ポイント3:スケジュールに余裕を持つ
「来月から働いてほしい」という急ぎのケースほど、書類の質が落ちて不許可リスクが高まります。逆算してスケジュールを組むことが、結果的に最短ルートになります。
- 海外からの呼び寄せ:就労開始予定日の6ヶ月前から準備開始
- 国内での変更:就労開始予定日の3ヶ月前から準備開始
- 追加書類の要求を想定し、社内書類(賃金台帳・就業規則等)を事前に整備
まとめ
- 特定技能1号の申請パターンは「海外呼び寄せ」「国内変更」「技能実習からの移行」の3つ
- 必要書類は企業側・外国人側の双方で多岐にわたるため、最新の公式リストで事前確認が必須
- 審査期間は申請の種類により異なるが、新規で1〜3ヶ月、更新で2週間〜1ヶ月が目安
- 不許可の主な原因は書類不備・報酬額・支援計画の不備・法令違反・業務内容の不一致
- 許可率を上げるには書類の質・専門家の活用・スケジュールの余裕の3つが重要
特定技能の申請手続きは確かに複雑ですが、正しい知識と適切な準備があれば、スムーズに進めることが可能です。初めての受入れで不安がある場合は、人材紹介会社や行政書士と連携して進めることをおすすめします。
採用コストの全体像を把握したい方は特定技能の採用コスト完全ガイドも、制度の比較をしたい方は特定技能と技能実習の違いを徹底比較もあわせてご覧ください。
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